マテリアルとは英語で「物質」を意味し、その用語はリサイクル業界で頻繁に使用されます。「マテリアルリサイクル」とは、廃棄物を製品の原料へと再利用するリサイクル手法の一つで、このプロセスの主要な目標は、廃棄物の再活用を通じて製品原料を再生し、使用することです。
このリサイクル方法には、「レベルマテリアルリサイクル」と「ダウンマテリアルリサイクル」という2つのアプローチが存在します。レベルマテリアルリサイクルでは、再生された原料が同じ製品の材料として利用されます。一方でダウンマテリアルリサイクルでは、品質が若干劣ることから、元の製品よりも下のランクの製品の材料として使用されます。
環境庁では天然資源消費量と環境負荷の削減のためマテリアルリサイクルを推進しています。
サーマルは英語で「熱」という意味で、サーマルリサイクルは、廃棄物を焼却するときに発生する排熱を回収して熱エネルギーとして利用するリサイクル方法です。ボイラーや発電、温水プールなどに使用されています。焼却するのは、発熱量が石油と同レベルの廃プラスチックです。
廃棄物を科学的に分解し、その物質を原料として新しい製品を作る方法を「ケミカルリサイクル」と言います。廃プラスチックを分解して石油やガスに再利用したり、家畜の糞尿をバイオガス化処理するのもケミカルリサイクルです。
マテリアルリサイクルのメリットはCO2排出量を削減できる、天然資源の消費を抑制できることです。環境保護の実現に繋がるための良い方法ではありますが、製造上の課題も多いと言われています。課題についてもまとめました。
国内でのCO2排出量の約3割を占めているのが産業部門・工業プロセスです。カーボンニュートラルを目指すにはCO2排出量を削減する必要があります。廃プラスチックを有効活用すれば地球温暖化の原因となっているCO2の排出量を削減することが可能です。
一から製品を製造するよりも、リサイクルをおこなえば天然資源の消費を削減することが可能です。資源には限りがあります。国内で循環できるようになれば環境への負荷も軽減され、製品の安定的な供給にもつながるでしょう。
マテリアルリサイクルは製造するうえで課題が多い傾向にあり十分な活用が進んでいません。日本の製造上の課題とは?主な課題は品質劣化のリスクがある、コストがかかる、カーボンフットプリントが難しいことです。それぞれについて解説します。
リサイクルした製品に少しでも異物が残っていれば品質が下がります。異物をすべて取り除くためには細心の注意を払わなければなりません。品質の落ちた製品を繰り返しリサイクルすると、どんどん質が落ちてしまいます。品質劣化を防ぐにはリサイクルする回数を制限する必要があるでしょう。
異物をすべて取り除くまで何度も作業を繰り返さなければならないため、人件費が高くなり時間もかかります。品質の劣化を抑えるには優れた技術も必要です。コストがかかるため、新しい製品よりもリサイクルされた製品の方が高くなる可能性も出てくるでしょう。
カーボンフットプリントとは、製品の原材料調達から廃棄・リサイクルするまでに排出された温室効果ガスをCO2量で表示したものです。カーボンフットプリントにより調達からリサイクルまでどのくらいCO2量が削減されたのかが分かります。
カーボンフットプリントに取り組むためには、製品の原材料調達からリサイクルまでのすべての流れに発生する環境負荷を算定する必要があるでしょう。マテリアルリサイクル製品は個別にカーボンフットプリントを算出するのが大変なので商品へのカーボンフットプリントで表示することは難しいと言えます。
マテリアルリサイクルはレベルマテリアルリサイクルとダウンマテリアルリサイクルの2つに分類されています。それぞれについて例を交えて解説していきましょう。
レベルマテリアルリサイクルとは、廃棄物を同じ製品の原料として再利用することです。例えば古紙から再生紙も廃棄物を原料に作られた紙であり、溶かした鉄くずで鉄系のアイテムを作る素材に再生されるのもレベルマテリアルリサイクルに該当します。
ダウンマテリアルリサイクルは、廃棄物が元の製品と同じ品質が保てない場合、一段階レベルを下げて、異なる製品の原料として再利用する方法です。例えば使用済のペットボトルを原料にした衣類やデザートカップや洗剤ボトルで公園のベンチやパレットが作られるのもダウンマテリアルリサイクルです。
リサイクルする廃棄物にもさまざまなものがあります。マテリアルリサイクルの具体例として、ペットボトルやプラスチック、ビールなど8つについてそれぞれのリサイクル方法をご紹介しましょう。
ペットボトルは回収されたあと、異物を取り除いてから細かく粉砕し洗浄・脱水・乾燥します。「PET樹脂ペレット」という原料になり、衣類やカーペット、文房具、各種容器などに生まれ変わります。衣類はどのように作られているのでしょう。衣類は原料を溶かし糸して作られています。
プラスチックは洗浄・粉砕してからフレーク状にします。廃棄物から同じ製品の原料として再利用されるだけではなく、衣類や卵パック、食品トレイ、ラミネート包材など異なる製品の原料としても再生が可能です。
プラスチックに比べてビニールは異物混入の影響をあまり受けることはありません。農業用ビニールハウスやパイプなどに生まれ変わります。タイルカーペットやパイプは、レベルマテリアルリサイクルで同じ製品に、ダウンマテリアルリサイクルでビニールハウスは床材に再生されます。
アルミ缶はマテリアルリサイクルに使用される金属製品です。回収されるとフィルムや塗料をはぎ取って高温で溶かし再生地金にし、地金を加工すれば新しいアルミ缶や自動車部品を作ることができます。アルミ缶の原料であるボーキサイトから新しいアルミ缶を作るよりも、リサイクル法を活用すればエネルギーが大幅に削減されます。
木くずやがれきは細かく粉砕されたあと、パーティクルボードなどの建材に再生されます。パーティクルボードは壁や床、屋根の下地材、家具素材として利用されている建材です。また、アスファルトやコンクリートのがれきはリサイクルすると建築材料に生まれ変わります。
缶にはアルミ缶とスチール缶があります。アルミ缶は金属製品ですが、スチール缶は鉄製品なので回収後、高温で溶かして不純物を取り除いたら再生スチールに成型されます。建築用資材などの鋼鉄製品を作ることができます。
古紙は回収されると異物と分別されます。その後、圧縮・梱包して製紙メーカーへ送られ、トイレットペーパーや再生紙、新聞紙になります。リサイクルできない紙は洗剤の箱やシール紙、ティッシュやキッチンぺーパーなどの汚れた紙です。紙をゴミに出す際は注意してください。
ガラス瓶細かく砕かれて新しいガラス製品の原料になり、ガラスは建築材料や道路舗装材としても利用されます。リサイクルできないガラスは、耐熱ガラス瓶や乳白色のガラス瓶、薬品が入っているガラス瓶です。ガラス瓶をゴミに出す場合は、よく洗ってから出しましょう。
廃棄食材にはコーヒーの豆かすや茶殻、野菜、果物、卵の殻などがあります。コーヒーの豆かすは脱臭・消臭・速乾性効果が期待されているため、タンブラーやノート、スポーツやアウトドアで活躍するウェアに活用されています。野菜や果物はフリーズドライしたあと、細かく水を加えて熱で圧縮し成型すると生活雑貨や建築資材になります。